2017年11月30日木曜日

永遠の始まり | ケン・フォレット

百年の物語、完結編。



今作も分厚いのが4冊と物凄いボリュームであり、アメリカ、イギリス、ロシア、ドイツを中心にキューバやポーランドなどさまざまな国で「冷戦」や「人種差別」から「自由」を求める人々を描いている。

世界史が好きなので読んでて楽しいが、「自由の国」アメリカでも人種差別がひどく公共の場でも黒人、白人の場所が分けられていたり、雇用が平等でないなど、これまでも映画などでも知っていたはずだが、いわれのない悪意の向けられ方に胸を締め付けられる。

かつては希望の革命であったはずの共産主義は、支配層の既得権益を守るためだけのシステムとなってしまい、ほとんどの人が幸せには遠い息苦しい時代が続く。同じ民族であり、みんなが平等であることを謳ったはずなのに、大抵の社会主義国家は独裁政権と何ら変わらない閉塞感しかもたらさず、やはり、人は自由を求めるものなのだなと思う。

ベルリンの壁ができる過程は、どうしてここまでして人を縛ることができるのか?と驚くばかりし、キューバ危機は生まれてないので小説とは言え、この生々しさ、逼迫さが空恐ろしくもある。

東ドイツのシュタージ、ソ連のKGBもさることながら、アメリカのCIAも嫌になるくらい独善的で悪意に満ちた支配欲みたいなもので溢れており、人を人と思わぬ所業が恐ろしい。

前々作からの登場人物もおり、国をまたいで血縁関係の家族もあって、久しぶりのフォレット作品なので、その辺を思い出すのが少々大変だった。エセルとフィッツのくだりは、前々作を読まないとなかなかにやりとできない。

60sのロックバンドの話も織り混ぜられており、ブリティッシュ旋風やサマー・オブ・ラブといったムーブメントも描かれて、自由を求める流れに沿った流行り熱のような世相が浮き彫りになって、これも時代のあだばなの如く散っていく。

ゴルバチョフの登場と共に冷戦も終息していくけど、そこから先は知ってのとおり大国のたがが外れ民族扮装があちこちで起こり、中東も平和とは程遠い。

100年経って科学技術は発達したけど、万民をすべからく幸福に導くことは未だ叶わず。人は歴史から色々学べるはずなのだが...


と柄にもないことを色々考えるきっかけと鳴った大作だった。大河好きには心底おすすめできるので、是非読んでもらいたい。