ポールのウイングス時代の曲のみを集めたベスト盤。以前、似たようなものでウイングスパンもあったけど、あちらはソロ名義の曲も入っていたので、こちらは純粋にウイングスの曲だけを集めたものとなってい。
キャリアの割にはそれほどベスト盤を乱発しているわけではないポールだけど、2016年のピュア・マッカートニーが内容としては充実しておりほぼ満足しているので、正直あまり期待しないで買った。
聴いてみて意外に良かった。やっぱり、「ウイングス」としての統一感というものはあったんだなと再認識した。メンバー変更も多いバンドではあったけど、ポールのソロ曲とはまた違った「バンド」の魅力がある。
後追いで聴いているとどうしても、ウイングス≒ポール・マッカートニーという図式で長らくウイングスを特別区別することなくポールのソロ時代として捉えていたのだけど、当時はれっきとしたバンドとして活動していたわけで、今回のベスト盤はまさにベストだと思う。ウイングスパンの時にこのコンセプトでやるべきだったのかもしれない。
バンド・オン・ザ・ラン、ジェットというった定番代表曲からアロー・スルーミーやラブ・イス・ストレンジなどちょっとマイナーな曲までバランス良く収録されている。通しで聴いてもどれも70年代と時代がまとまっているせいで違和感なく聞きやすい。
ウイングスパンやピュア・マッカートニーにも収録されていない地味目な(笑)ロンドンタウンを耳にして、あの粘っこいながらもきらびやかなギターソロのサウンドにはっとさせられた。ここまでのベスト盤に入ってないから、93年のコレクションシリーズ以来のリマスターだと思うけど、こういう発見があるのもベスト盤の楽しみの一つ。
正直ダウンロードでもいいかと思ったけど、CDで買って良かったと思う。外箱で表のロゴや後ろの曲目一覧の部分がエンボス加工されていて気持ちがいい。ブックレットも詳細な説明や写真も充実していて、物理メディアにした甲斐が十分にあった。国内盤にはブックレットの全文和訳もあり読み応えあり。
ウイングスパンのときも初回盤はレンチキュラー印刷による3Dジャケットだったので、物理メディアの装丁にはそういう遊び心があるのが嬉しい。
なんとなくで買った割には随分満足している。ウイングスの魅力を再発見できたし、改めて70年代のポール・マッカートニーの音楽を楽しむことができた。
