2017年10月13日金曜日

月の裏側 | 恩田陸



恩田陸の長編小節。
北九州のある町で行方不明が発生するがその後戻ってくるという奇妙な事件が続けて起こる。
そこに住む恩師に呼ばれた音楽プロデューサーは、恩師とその娘、地元紙記者と共に事件について調べ始めるが…

長編ということもあり、この間読んだ「木曜組曲」に比べ物語が滑り出すスピードが遅いかなと思ったが、徐々に加速していく展開にはまりこんでいく。水路が巡らされた街の描写は、どことなく全体的に「ユージニア」で感じた雰囲気があり、異世界めいた展開にぴったり。

さらわれた人間が実は作り直されて戻ってくるという、キングっぽいSFというかホラーのような仕掛けがあり、それを「盗まれる」という表現で例えている。

その町の図書館でも水の幕みたいなものが入り込もうとしたり、何者かの行動が見受けられるようになる。
当初は不定期にさりげなく起きていた「盗まれる」現象が町全体で起きてしまう。

あまりネタバレしたくないが、死んだ飼い猫を火葬にしたときに、というのが真実に近っこうとするきっかけとなる。

「真実は男のものだが、真理は女の中にしかないものだ。」という一文が、ははぁなるほどと分かったような、妙な納得感があって気に入った。