2021年10月3日日曜日

The Quest | イエス

ザ・クエスト (完全生産限定盤) (Blu-ray Disc付)

7年ぶりの新作。前評判も良さげだが、全体通して聴くと評判どおりの「清涼感」溢れるサウンドで聴き心地が良い。

作曲クレジットを見ると、ボーカルのジョン・デイヴィソンの貢献も多く、スクワイヤ番長亡き後に入った愛弟子ビリー・シャーウッドのベースプレイもイエスにふさわしいゴリゴリサウンドやコーラスでイエスサウンドに貢献し、「若い力」が功を奏した1枚となっている。

ただ正直言うとちょっと物足りない。(ちょっとがっかりした)前作のテイストが強い。何故か?

ハウ師匠プロデュースということで、それこそ黄金期のイエス・ミュージックを目指してたんじゃないかと思うんだけど、物足りないのはイエスならではの緩急の差。緩急の「急」が足りないのかな、と。

デイヴィソン以外、ダウンズやハウ師匠も作曲しており、イエス・ミュージックの歌メロとしては普通に良い。(これはほめているつもり)

となると、全体的なアレンジなのか。メロディや歌声が流麗なだけに、上滑りしているというか、引っ掛かりが物足りない。ハウ師匠のギターやダウンズのキーボードによる装飾は悪くないが、ドラムがちょっと単調なのではないかと。アラン・ホワイトの体調が万全でないことが起因しているとなると、あまりそこに突っ込むのも申し訳ない。ただ、作品のためならパーカッションで参加しているジェイ・シェレンにもっとやらせても良かったのではないか、と。
あるいは、ハウ師匠+もう一人共同プロデューサが居て、バンド外の第三者意見があってそういう方向へリードされて欲しかったような。

Youtubeなどで先行公開されていたリードトラックのThe Ice Bridgeは悪くない。イエス・ミュージックしていてアルバム全体への期待も膨らんでいただけに、前作もそうだけど素材はいいのに、ちょっと物足りない感がある。もしかしたら、ライブで観たりすると印象変わるかもしれないけど。

何はともあれ、こうして新作を世に出してくれたことは大変嬉しい。ビリー・シャーウッドの20数年ぶりのスタジオ復帰作というのもイエスの歴史っぽくていい。

ついにオリジナルメンバー皆無となり、出戻り含めメンバーの世代面含めた新陳代謝が行われている様を見ると、本当にオーケストラのように看板かかげたままメンバーを入れ替えながら楽団(バンド)を維持し続けるというのが現実味を帯びてきたように思えてくる。新曲があるからこその現役バンドという見方もあるのだけど、一方でオーケストラに新曲ではなくベートーヴェンの第九やストラヴィンスキーの春の祭典を求めているように、往年のイエス・クラシックを再現できさえすればイエスだと十分に言える。その点でも市川哲史氏掲げる新曲などいらない懐メロバンド化も大変有意義な提案だと思う。
かたやキングクリムゾンは以前では考えられないくらい往年の名曲再演に軸足を置いていて高評価。ただ、こちらはフリップ御大が終了と宣言したら、メンバー変えて継続ってことはなさそう。