尼でハヤカワ書房のKindleセールだったので、以前読んだ伊藤計劃でもう1冊読むかと、話題の「ハーモニー」を読んでみた。
以前から伊藤計劃自体は(既に亡くなってしまったものの)話題に上るSF作家で、確かに「虐殺器官」は凄かった。プロットもそうだけど、救いのないエンディングにある意味納得せざるを得ない奇妙な説得感ある物語だった。
本作も前作に負けず劣らず、ハッピーエンドとは酷遠い、まぁ主人公自体親切の押し売りが嫌で僻地の紛争地帯の任に当たるくらいなので相当なもの。
「虐殺器官」ラストで生じた大災厄からの未来社会。減りすぎた人類は個々の生命を大事にフィジカルもメンタルもすり減らぬようWatchMeというナノマシンで病気を根絶し、争いのない世の中を作り上げつつあった。
紛争地帯から帰国した主人公トァンは、食事中の旧友が目の前で突然自殺を図る場面を目の当たりにする。同時に多数の人間がいたるところで自殺を図るという事件が発生。その真相を追っていく中でかつて自殺でいなくなったはずの学生時代の親友ミァハの影があることに気づき、捜査を続ける。
脳には影響しないはずのWatchMeに外部から意識を自在に操ることが可能なバックドアが仕掛けられ、全人類の意識、自我をなくすことで完全な調和(ハーモニー)を実現させようとする恐ろしい計画が進められていた…
なんだか人類補完計画のような目的。
虐殺器官の次がこれなので、もし著者が存命なら次はどんな世界を描いて、読者の心を鷲掴みにするのか気になる。