2016年1月19日火曜日

一路 - 浅田次郎


浅田次郎の参勤交代を描いた小説。昨年上巻を読み、今年ようやっと下巻も読了。

火事で亡くなった父の役目である「供頭」をついだ一路は、右も左もわからない中、古くから伝わる参勤交代の覚書を手掛かりに参覲交代することを決める。

分からないことだらけだからこそ古式に則ることに。このこだわりには殿様も何か汲み取ったのか、異をとなえることなく「よきにはからえ」と。

こうしてかなり時代錯誤の参勤交代道中となるが、様々な見せ場があり、読んでいてほくそえんでくる。

神社に奉納されていた巨大な朱槍を道中の印とすべく怪力巨漢の双子を雇ったり、派手な衣装を武骨一遍の武士にやらせるくだり、お家乗っ取りも絡む道中のあれやこれやと、次々と迫る難問に一路や仲間達がどうにか取り組む様がいい。

バカ殿と揶揄される殿様の思慮深き振る舞いに心動かされたりもする。

武士ならではの窮屈な理屈も美学に転じる時代小説、武士の話はやっぱりいいなぁと再確認。古き良き様式に行列に惚れ惚れする役人、宿場町の民と同じような目線で大名行列カッコいい、と思える錯覚がw

昨年読んだ「超高速!参勤交代」とは違ったエンターテイメントであり、「人の役目」や「古式の由来」といった物事の本質を問いただされているようにも読み取れる良作。