2023年6月5日月曜日

The Best Year Of My Life | オフコース

The Best Year Of My Life

コンプリート・アルバム・ボックスをゲットしたので、リマスターされたアルバムを振り返りたい。

まずは、84年リリースの鈴木康博脱退後の新体制でのニュー・アルバム。ここからレコード会社もEMIからファンハウスに変わっている。

一聴して「音が変わった」という印象。良いとか悪いとかではなく、「変わった」。今思うと、とにかく新しいことをやってみようという意気込みが感じられる1枚。

「夏の日」や「緑の日々」では俳優・女優を配したまぁまぁ尺のあるビデオまで制作し、ドラムはシモンズのエレドラ取り入れたり、と幅を広げながら今後への種まきというか今までと同じことだけではないという意欲が感じられて良い。

歌詞の内容も恋愛模様ながらもどことなくシティ・ポップ的な感じも当時の空気のせいか。サウンドもシャープでソリッド。特に冒頭の「恋びとたちのように」のサックスや「君が、嘘を、ついた」のギターから攻めの姿勢が感じられる。
その割に、昨今振り替えられるシティ・ポップの話では当時のオフコースがそれほど取りあがれらないのが不満。まぁ、シティ・ポップ・バンドという訳でもないからいいんですが。

で、ものすごい個人的な意見なんだけど、このいわゆる後期オフコースって本作から解散までのStill a Long Way To Goまで4作(英語詩アルバムがあるから実質3枚)あるけど、上記で「種まき」と書いておきながら、本作以降テイストは大きく変わらないというか、キング・クリムゾンになぞらえるとディシプリン期。81年のディシプリンにすべて凝縮されていて、残り2枚(ビート、スリー・オブ・~)に新鮮味を感じない、ああいうところがあるなとちょっと思ってしまう。音楽性はまったく関連ないんですが、バンドの進み方というか終わり方というか...まぁ、独り言、戯言の類なので放置してください。オフコースは終わらせることが念頭にあって終わらせたのと、80sクリムゾンはネタ切れで行き詰って終わったので、理由は違うというのは言っておきます。

それだけ、本作には魅力が凝縮されているというか、アルバムの完成度が残り3枚と比べると、個人的には感じているところであったりする。
冒頭の「恋びとたちのように」に続く、「夏の日」は本当に名曲。シンプルな感じなんだけど、あのコーラスワークがふくらみを与えてくれる。
小田さん以外の松尾一彦ボーカル曲も完成度高いし、このアルバムに馴染んでいる。アルバム未収録のシングルB面の「君の倖せを祈れない」もどうして本作に入れなかったのかというぐらいいい曲。

それと最近、「きをつけて」を勝手に再評価してリピートしている。なんだろう、あの空気感。聞いているうちにたそがれてくる没入感。メロディ、歌詞、シンプルなピアノ中心のアレンジ、そしてあの歌声、それらの組み合わせに今更ながら、ぐっと来たりしている。この曲に限らないんだろうけど、後期は「離れてしまいそうな、離れてしまった恋人たち」の描写が秀逸。創作か実体験かは本人のみぞ知るところだけど、ティーンエイジャーがきゅんとくるようなクサイものではないよね。
ピアノ中心と言えばラストを飾る、「ふたりで生きている」。終盤の流麗なストリングスが印象的ではあるけど、この曲の神髄はやっぱりあの歌いだし「思いたくないけど」の一声につきる。そして、アルバムタイトルを含んだ「May be the best year of my life」で締めくくるこの完成度の高さよ。