Signatur Box買って改めて気づいたのは、これまでジョンのアルバム・レビューをしていなかったこと。
90年のボックスセットやアンソロジーの振り返りもほんのちょっとやった程度。どのみち再発含む新作もそう出ておらず、取り上げる機会が少なかったのは事実。
ということで今回一番聴きたかったアルバム、Walls and Bridges(心の壁、心の橋)について、駄文を綴りたいと思う。
前作マインド・ゲームスからセルフプロデュースとなり、政治的な色が薄まり内省的な内容になったが、リリース前からヨーコとの関係も危うくなっていき、俗に言われている「失われた週末」という時期に入ってから制作されたアルバム。
そういう事もあってか、さらに心情を吐露したかのような内省的な印象を受ける。それでもサウンド自体はスタジオ・ミュージシャンなども上手く使いながら、ロック的なサウンドを纏い、大変聴きやすく仕上がっている。セルフプロデュースという点では前作以上にうまくできたのではないだろうか?
陰陽バランスとれているなと感じていて、陽の部分で特徴的な1曲が「真夜中を突っ走れ(Whatever Get You Through The Night)」。ホーンセクションの導入も正解。ピアノやコーラスでエルトン・ジョンがゲスト参加。その縁でエルトンのライブに飛び入り参加するが、そしてそれが悲しくもジョン生前に演奏された「最後の新曲」ともなった。
「夢の夢(#9 Dream)」も柔らかみのあるポップ・ソング。コーラス部分の歌詞の意味が不明だが面白い。
陰部分としては「愛の不毛(Nobody Loves You (When You're Down and Out))」や「鋼のように、ガラスの如く(Steel and Glass)」
このアルバムは各曲の邦題も絶妙で、「心のしとねは何処」、「枯れた道」など素晴らしい。