2024年5月23日木曜日

微熱 | スザンヌ・ヴェガ

微熱

4作目原題、99.9F°。「微熱」は実に素晴らしい邦題。
当時は問題作として取り上げらてた気がする。ネオアコの旗手、NYの新しい女性シンガーソングライターという流れできたのに、本作でいきなりエレクトリックというかインダストリアル・ロックというか、パーカッシブな装飾、アレンジが凄い。
特に出だしのカンカンと鳴り響くような「ロック・イン・ディス・ポケット」。
そこから続く「ブラッド・メイクス・ノイズ」は前3作にはまったくない曲調になっていて心底驚いた。図太いベースラインが秀逸。これだけでも曲として成り立ちそう。とは言え、根底にあるメロディや歌の「間」の取り方は、スザンヌ・ヴェガのもの。ちなみに、ベースラインが特徴的な曲としてもう1曲「アズ・ガールズ・ゴー」がある。

プロデューサーであるミシェル・フルームの手腕が冴えた結果なのか、これまでのサウンドからの変わりように戸惑いはするもののファンからは暖かく迎えられたんじゃないかと思う。

購入当時から気に入っている曲も多く、「イン・リヴァプール」は特に好き。あのマイナーな曲調、悲観的な歌詞、語るような歌い方、ラストのコーラスと、突き抜けた完成度。
「ヒーローズ・ゴー・ダウン」はキーボードのリフが印象的なポップな1曲。
そんな中に従来のスタイルであるアコースティックな「ブラッド・サインズ」もあり、ここまでの音楽性をぶった切って否定するのではなく、彼女の音楽的領域を拡げようとしていることもうかがえる。

ネオアコ、フォーク調からガラッと変わったアーティストと言えば、EBTG(エヴリシング・バット・ザ・ガール)もあげられる。こっちは本当にガラッと変わってからはついていけなかった。いきなり、ダンスミュージック(ドラムン・ベース)だし。その兆しがあったころまではよかったものの、100%方向転換した後のアルバムは今もプレイヤーに入れてないwww

本作を手掛けたミシェル・フルームは、クラウディッド・ハウスや本作直近ではポールの復活作である「フラワーズ・イン・ザ・ダート」のプロデューサーの一人でもあり、売れっ子なんだろうなぁ、と当時思った。
まさかこの後、スザンヌ・ヴェガと結婚するとは思わなんだ。(後年離婚している)