図書館の新刊検索で見つけた1冊。
著者は後で調べると定食評論家という羨ましい?人で著作も多いみたい。今回はとにかくタイトルの勝利。
読んでみるとこれがなかなかとんかつ好きにはナルホド!と頷きながらページをめくってしまう面白さがあり、ありがちな評論家目線の文章ではなく、一個人の目線でどこまでも気取らず飾らずとんかつに接しているところが好感持てる。もちろん、ちょっと悪く言うとブログ的な散文とも受け取れるが、気楽なエッセイとして気負わずに同好の意見に耳を傾けるつもりで読めるのがいいところではないか。
目黒のとんきや神保町のいもやなど定番を抑えつつ、和幸、かつやといったチェーン店も気さくにレポートするところが一般消費者目線でよさげ。
しかも所々でとんかつでなく、メンチカツやエビフライなど頼むものだから読んでてツッコミいれたくなるが、「悩んでメニューを決めた」結果とも受け取れ、そこも等身大のとんかつ(屋)好きの姿が浮かびでて微笑ましい。
和幸の出自にも感心したが、意外なところでは港南台のかつ泉まで取り上げられているところに、驚いた。明治・大正の洋食文化黎明期におけるとんかつの発祥から、チェーン店は神奈川に1号店が多いなど、ちょっとしたトリビアも楽しめる。
随所に「おかわり」で満腹になるところも、とんかつ道を歩むものとして清く正しいあり方に、これまたほっこりする。
そう、本書は流行に左右されるようなガイドではなく、あくまで「とんかつ道」を楽しむ男の記録、という読み物であり、とんかつ好きにはお勧めできる1冊。