2016年3月24日木曜日

耳こそはすべて - ジョージ・マーティン

Beatlesのプロデューサーだったジョージ・マーティンが亡くなったので、彼の半生を振り返った著作「耳こそはすべて」を読んだ。

小さい頃からピアノはやっていたがいきなりそっちの業界ではなく、空軍に入隊というのがキャリアの積みはじめなんだから人生どうなるかわからない。

そこで最初の奥さん(!)を見つけ、除隊後は従軍特典で大学で音楽をようやく正式に学ぶ、というものだった。

なんやかんやでEMI入社後も様々なエピソードがあり、色々なレコーディング経験でBeatlesと出会う頃には既に十二分に仕事をこなしていた敏腕プロデューサーだった。

そうは言ってもやはり、彼らのエピソードなくしては精彩に欠けるのも事実で、Georgeの「あんたのネクタイが気に入らない」から始まり、John LennonのStrawberry Fields Foreverの無理難題、PaulがShe's Leaving Homeを他のアレンジャーに頼んでしまった事に対する恨み節まで、既に聞いている話ではあるものの彼目線での話は新鮮で面白いものである。

思いの外Beatlesネタは多くなく、Let It BeやAbbey Roadに関するコメントはない。

スタジオやマルチトラックに関する記述が多く、彼がいかにエンジニアとチームを組んで良い音で録ろうと努力していたかの片鱗が伺えて興味深い。

80sに出版された書籍のためその後のAnthology Projectに関する部分がないのとAmericaなどBeatles以降のプロダクションについての振り返りが少ないのは残念。

それでも本人による回顧録は貴重な資料であり、彼の音楽への真摯な態度に敬服できる。