前作から参加のシャーウッドはギター担当となり、前作ゲスト参加のイゴール・コロシェフがキーボードとして正式メンバーとなり、珍しい6人編成。
プロデュースはエアロスミスなどで有名なブルース・ウェアバーン。彼の仕切りがいいのか、今でも愛聴している名作になっている。
残念ながらフェアバーンはミックス前に他界してしまったのだけど、彼との関係がこの後も続いてたとしたらイエスは結構メジャーシーンに返り咲いたんじゃないかと思う。
どの楽曲も良く、捨て曲ないと思う。前作とはクオリティやテンションが違う。ジャケットも安定のロジャー・ディーン。
冒頭のHomeworldはイエスにしては珍しくゆったりと始まり、徐々にいつものシンフォロック全開のスタイルに展開していく、90s風プログレとして大変良くできている。
2曲目のIt Will Be A Good Day (The Ladder)は一転してポップ調だが、これぞイエスというサウンド、コーラスが楽しめる1曲。ハウ師匠のギターもキレがある。アルバム全体に言えることだが、ジョン・アンダーソンの嗜好なのかどことなく南国っぽさというかカリブっぽいテイストがちりばめられているのも、いい風に作用していると思う。アンダーソンの主メロの後ろでCome
tomorrow, Destiny...とコーラスしているのもグッド・ポイント。
続くCan I?はWe Have Heavenのオマージュ。これだけ聴くと?と思うもアルバム通して聴くとさほどおかしくないから不思議。
プログレ的でない曲の良さも本作の売りだと思っていて、6曲目の「If Only You Knew」はイエスがやらなくてもいいようなポップ・バラードだが、ツワモノメンバーがしっかり演奏し、アンダーソンが流麗に歌い上げると一流の仕上りになるといういい例。とにかくメロディ、歌詞ともに楽曲として十二分の良さがあり、それをうまく体現していると言える。It Will Be A Good Dayといい、If Only You Knewといいイエスという色眼鏡を外せば、純粋に良曲。どちらもシングルカットして売れても良かったと思っている。
9曲目「The Messenger」はラビン期の曲でもおかしくないような1曲。
続く「New Language」は出だしこそ、かつての緊張感かつスピード感あるフレーズでプログレ大曲っぽい始まり方だが、一旦落ち着くと本作のトーンにあったミドルテンポの歌ものに突入。ちょっと力抜けるなぁと思いながらもハウ師匠のフレーズもいいおかげで、最後まで聞ける。
ラストを飾る「Nine Voices」はABWHのLet's Pretendを思い出させるアコースティックなアンコール的小品。クロージングに相応しい。
本作はバランス良くポップテイストあってのプログレなので、イエスの50年の歴史における「中興の祖」的な作品だと思っている。
このラインナップ、若手も入って新陳代謝も進んでいいんじゃないと思っていたら、その若手2名が抜けるんだからいけない。コロシェフはまぁコンプライアンス的にアウトなので仕方ないとして、有望なプログレ職人シャーウッドはハウ師匠からしてギタリスト2名体制が気に入らなかったんでしょうか?シャーウッドの師匠筋のスクワイア番長も熱心に引き留めた感じもしないので、この辺のメンバー間のバランスが良く分からない(笑)
シャーウッドも復帰しているので、Nine Voices以外の曲もライブで改めて聴きたいと願ってます。